運営のリアル

民泊の宿泊者名簿は全員分必要?記載事項と保存期間を営業形態別に整理

宿泊者名簿は代表者だけでなく宿泊者全員分が必要です。住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊それぞれの記載事項と自治体が追加する項目、外国人ゲストの旅券、保存期間を条文ベースで整理しました。

🍎宿りんご通信編集部

公開

宿泊者名簿住宅宿泊事業旅館業特区民泊

宿泊者名簿は、代表者だけでなく宿泊者全員分が必要です。住宅宿泊事業(民泊新法)では、観光庁が「代表者のみの記載は認められません」と明示しています。記載する項目は営業形態や営業している自治体によって違い、保存期間はどれも作成した日から 3 年間です。

この記事では、住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊の 3 つについて、名簿に書くこと・外国人ゲストの扱い・保存のしかたを、法令の条文をもとに整理します。

宿泊者名簿とは

宿泊者名簿とは、宿泊施設の運営者が、泊まった人の氏名や住所などを記録して保存しておく名簿のことです。住宅宿泊事業法・旅館業法・国家戦略特別区域法(特区民泊)のいずれでも、運営者に作成と保存が義務づけられています。特区民泊では「滞在者名簿」と呼びます。

たとえば旅館業で「連絡先」が記載事項に加わったのは、宿泊者が感染症の患者やその関係者だったと分かったときに、必要に応じてその宿泊者へ連絡を取れるようにするためです(厚生労働省)。

営業形態別の記載事項

名簿に書く項目は次のとおりです。いちばん大きな違いは、旅館業と特区民泊が「連絡先」、住宅宿泊事業が「職業」と「宿泊日」を求めている点です。

項目住宅宿泊事業(民泊新法)旅館業特区民泊
氏名必要必要必要
住所必要必要必要
連絡先―必要必要
職業必要――
宿泊日必要―(※)―(※)
国籍・旅券番号日本国内に住所のない外国人のみ同左同左
保存期間3 年3 年3 年
根拠住宅宿泊事業法施行規則 第 7 条旅館業法施行規則 第 4 条の 2厚生労働省関係国家戦略特別区域法施行規則 第 10 条の 2

※ 旅館業では、このほかに「都道府県知事が必要と認める事項」を追加で求められることがあります。特区民泊は、施行規則で定められた様式(第一号様式)で作成します。宿泊日などの追加項目は、営業している自治体の案内を確認してください。

旅館業の名簿は、2023 年 12 月 13 日の旅館業法改正で「職業」がなくなり「連絡先」が加わりました。改正前に作った紙の名簿や記入用紙を使い続けている場合は、項目を見直しておきましょう。

自治体が独自に求める項目もある

上の表は法令で決まっている項目です。実際には、営業している自治体によって項目が追加されることがあります。

  • 旅館業:施行規則が「その他都道府県知事が必要と認める事項」を記載事項に含めているため、自治体ごとに項目が増えます。たとえば鹿児島市は、年齢・前泊地・行先地・到着日時・出発日時・客室名の記載を案内しています
  • 特区民泊:施行規則で定められた様式に沿って作成し、自治体の案内に従います
  • 住宅宿泊事業:名簿の項目は全国共通ですが、2 か月ごとの定期報告で国籍別の宿泊者数の内訳を報告します(住宅宿泊事業法施行規則 第 12 条)。日本人を含めて全員の国籍を名簿で集めておくと、報告の集計が楽になります

自治体の追加項目は、条例や細則の改正で変わることもあります。そのため名簿は、項目を自分で追加したり、必須と任意を切り替えたりできるものを選んでおくと安心です。名簿のしくみを選ぶときは、次の点を確認してください。

確認すること理由
項目を自分で追加できるか自治体の追加項目(年齢・前泊地・行先地など)に対応するため
必須と任意を切り替えられるか営業形態や自治体によって必須の項目が違うため
追加した項目も外国語で表示されるか海外ゲストが自分で入力できるようにするため
追加した項目も出力や保存に含まれるか行政から求められたときに、名簿としてそのまま提示できるようにするため

yadolingo の宿泊者名簿も、生年月日・性別・前泊地・行先地の追加や、独自の項目の追加(5 言語に自動で翻訳)ができます。

全員分が必要な理由と、よくある勘違い

名簿の対象は「宿泊者」で、予約した代表者に限られていません。住宅宿泊事業については、観光庁が「宿泊者名簿には、宿泊者全員を記載する必要があり、代表者のみの記載は認められません」と明示し、宿泊契約(グループ)ごとに誰が泊まったか分かるように記載するよう求めています。旅館業・特区民泊についても、大阪府などの自治体が全員分の記載を徹底するよう呼びかけています。

よくある勘違いは次の 3 つです。

  • 「予約サイトに代表者の情報があるから十分」:予約サイトの情報は代表者分だけのことが多く、名簿の代わりにはなりません
  • 「同行者は人数だけ分かればいい」:同行者一人ひとりの氏名・住所なども必要です
  • 「子どもは書かなくていい」:法令に年齢による除外の定めはありません。迷う場合は自治体の窓口に確認してください

外国人ゲストは国籍と旅券番号も記載する

日本国内に住所を持たない外国人が泊まる場合は、国籍と旅券番号も記載します。あわせて旅券の提示を求め、旅券の写しを名簿と一緒に保存します。旅券の写しを保存していれば、名簿の氏名・国籍・旅券番号の記載をそれで代えることもできます。

日本に住所がある外国人(日本で暮らしている人)は、日本人と同じ項目を記載すれば足ります。旅券の提示を拒まれた場合は、最寄りの警察署に連絡するよう案内している自治体もあります(香川県など)。

保存期間と保管場所

名簿は、どの営業形態でも作成した日から 3 年間保存します。保管場所は次のどちらかです。

営業形態保管できる場所
住宅宿泊事業届出住宅、または住宅宿泊事業者の営業所・事務所
旅館業旅館業の施設、または営業者の事務所
特区民泊施設、事業者の事務所、または名簿の備付けを委託した先の事務所

住宅宿泊事業では、パソコンのファイルなどの電子データで保存し、必要なときにすぐ表示・印刷できる状態にしておけば、紙でなくてもかまいません。

運営中にできる名簿の点検表

最後に、いまの名簿の運用を見直すための点検表です。当てはまらない項目があれば、次の予約から直しておきましょう。

点検すること確認のしかた
同行者を含む全員分があるか直近 5 件の予約で、宿泊人数と名簿の人数を照らし合わせる
営業形態に合った項目か旅館業・特区民泊なら「連絡先」、住宅宿泊事業なら「職業」「宿泊日」の欄があるか
自治体の追加項目が入っているか営業している自治体の案内(条例・細則)で求められる項目が名簿にあるか
外国人ゲストの旅券の写しがあるか国内に住所のない外国人の予約で、旅券の写しが保存されているか
3 年間取り出せるか3 年前の名簿を実際に開けるか(紙の保管場所、データのバックアップ)
記入用紙が古くないか2023 年 12 月の旅館業法改正前の様式を使っていないか

名簿の集め方(紙・フォーム・専用サービス)については、別の記事で詳しく取り上げます。最終的な運用は、営業している自治体の窓口や案内で確認してください。

よくある質問

Q. 宿泊者名簿は代表者 1 人分だけでもいいですか?

いいえ。住宅宿泊事業では、観光庁が「宿泊者全員を記載する必要があり、代表者のみの記載は認められない」と明示しています。旅館業・特区民泊でも名簿の対象は宿泊者で、自治体も全員分の記載を求めています。

Q. 日本人のゲストも名簿に記載が必要ですか?

必要です。国籍に関係なく、宿泊者全員の氏名・住所などを記載します。国籍と旅券番号の記載が追加で必要になるのは、日本国内に住所を持たない外国人の場合です。

Q. 日本に住んでいる外国人に旅券の提示を求める必要はありますか?

法令で国籍・旅券番号の記載が求められているのは、日本国内に住所を持たない外国人です。日本に住所がある外国人は、日本人と同じ項目を記載します。

Q. 名簿の項目は自治体によって違いますか?

違うことがあります。旅館業では、法令の項目に加えて都道府県知事などが必要と認める項目(年齢・前泊地・行先地など)が求められることがあります。項目を自分で追加・変更できる名簿を使うと、自治体のルールに合わせやすくなります。

Q. 宿泊者名簿は何年保存すればいいですか?紙でないといけませんか?

どの営業形態も、作成した日から 3 年間の保存が必要です。住宅宿泊事業では、パソコンのファイルなど電子データでの保存も認められています。

出典・参考

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